北羽新報 2010年3月29日 掲載文章より抜粋

犬、猫の飼い主探しに奮闘
「高齢化時代」の橋渡し役 「命あるもの-」の思いで

 飼い主の経済的な問題や病気、高齢を理由に、飼い続けることが難しくなった犬や猫の新たな飼い主探しに励んでいる人がいる。中村厚志さん(57)=能代市鰄渕字中嶋古屋布=だ。「犬も猫も命あるもの」。この地域でもペットを飼う人は多く、こうした問題がますます増えるのではないかと懸念する。

 中村さんは同市中沢字瓶長根でペットの火葬業を営んでおり、ペットとペットを愛育する人々とのかかわりは深く、飼い主を失ったペットの一時預かり活動を行っている。
 そんな中村さんの元に1月上旬、一匹のゴールデンレトリバー(雄・6歳)が預けられた。このゴールデンレトリバーは飼い主だった夫婦が事業に失敗して離婚、借金のために家も失い、それまで通りに飼い主と暮らすことができなくなった。
 犬の展示販売の許可も持つ中村さんは、無償でこの犬を事業所で飼いながら、ホームページを通じて新たな飼い主を探した結果、2月上旬に盛岡市の60代の女性に引き取られた。経済的な問題のみならず、飼い主の病気や高齢を理由に路頭に迷うペットもいる。
 ゴールデンレトリバーと入れ替わるようにして、今度は中村さんの事業所で1匹の雑種(雄・4歳)が生活している。この犬は、同市内に暮らし、いずれも認知症を患う80代の高齢夫婦に飼われていた。夫婦の在宅介護をするケアマネージャーが犬を気に掛け、中村さんに相談したことがきっかけだった。
 この犬が中村さんの元に来た当初、環境の変化もあり、餌を与えても、3日間は口にしなかったという。「私は犬や猫を一時的に預かり、欲しい人への橋渡し役」と話す中村さんは、新しい飼い主と対象となる犬が良い関係を築けるようにと、犬の個性や癖を把握するよう努めている。
 能代保健所によると、20年度に管内で捕獲された犬は40匹で、2日間の公示期間に飼い主が名乗り出て、返還されたのはわずか6匹だった。また、もらい手が見つからなかった子犬、引っ越しなどを理由に飼い主の意向で引き取りを願い出された犬は26匹。この中には飼い主の経済的事情、病気や高齢によるものもあったという。
 捕獲や引き取られた犬や猫は殺処分が行われる県動物管理センターに移送される。「移送=殺処分」ではなく、しつけに問題のない犬や若い犬などは新たな飼い主に受け渡される可能性もある。しかし、気性が荒い犬や高齢な犬は貰い手が見つかりにくいのが実情だ。
 時にペットを無責任に捨てる飼い主もいるが、固有の事情を抱えているケースも多い。
 これまで亡くなったペットと飼い主の別れの場面を幾度となく見てきた中村さんは「ペットを最後まで面倒みることが一番良いが、そうできない人もいる。やむを得ずにどうしてもペットを手放さなければならない状況になった人とは一度話をしたい。犬も猫も命がある」と語った。